今回は、40代後半の生徒さんのお話です。
この方は、丸10年ピアノのレッスンに通われています。ピアノは今までまったく弾いたことがなかったそうですが、多少は楽譜が読めるという状態から始められました。
ピアノが弾けたらかっこいいだろうなあと思っていたそうで、またご自宅にキーボードがあったのも、ピアノを始めようと思ったきっかけのようです。
初心者の大人の方向けの教材を2冊ほど練習し、そのあとは、少しずつ色々なジャンルの曲を弾いたり、ご自身の弾きたい曲を練習するという進め方をしています。
今まで、エルトン・ジョンさんの「YOUR SONG」や坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」、モーツァルトの「トルコ行進曲」などを弾いてきました。
今は、ドビュッシーの「夢」を弾いています。
この曲は、以前弾けるようになった曲なのですが、ご本人が「もう一回ちゃんとやりたい。今弾いたら、前よりもうちょっと、ちゃんと弾けるようになるのでは」とおっしゃるので、再度練習をしています。
このお話を聞いたときに、「なるほど、こういう考え方もあるなあ」と思ったのです。
ピアノの曲を練習していますと、どんどん先に進めたい、もっと難しい曲を弾けるようにしたいと思います。これは向上心の表れなので、素晴らしいことです。
しかし、ピアノの楽しみ方ってそれだけではないはずなのです。
ピアノに限らず、日常生活で同じものを見ても、その時の気分や時間帯、状況によって、感じ方がずいぶん違うものになりますね。ピアノも同じなのです。
同じ曲でも、練習をしていた当時は、もしかしたら弾くことに必死だったかも知れませんが、しばし時をおいて再度同じ曲を弾いてみますと、「ああ、やっぱりいい曲だなあ」とか「この部分が好き」というように、以前よりも一段とその曲の良さを噛みしめることもありますし、「今は、この部分がいい」というように、曲の感じ方や印象が変わってくることもあるのです。
時を隔てて、ご自分の感じ方の変化を楽しむ、というような進め方も、ピアノの楽しみ方の一つなのだと改めて感じさせて頂きました。
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