(この記事は、2014年3月31日発行の第144号 メールマガジンに掲載されたものです)

以前、「たのしい音楽小話」のコーナーで、スズキ・メソードのコンサートをご紹介したことがあります。ブログでも、写真付きで掲載していますので、ご参照ください。(独自のヴァイオリン教育で有名な鈴木メソードのコンサート)

このスズキ・メソードの創始者である鈴木鎮一さんが書かれた本に、『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』(講談社現代新書)があります。

愛に生きる 才能は生まれつきではない (講談社現代新書 86)

鈴木 鎮一
講談社

昭和41年(1966年)に出版されたものですが、現在でも読み継がれる名著で、お子様の才能について書かれています。

お子様の才能や素質については、ピアノ教育でもよく聞かれますし、ピアノ・コンシェルジェのコーナーでも、時々関連したご質問をいただきます。

「才能」は、ご本人だけでなく、親御さんやピアノを教える先生にとっても、漠然としていて捉えどころが難しい問題なのではないでしょうか。

そこで、何回かに分けて、この鈴木鎮一さんの『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』の本を通して、「才能」について考えてみたいと思います。

コン・ヴィヴァーチェでは、「子供のためのピアノ教育」という解説書を販売していますが、この解説書の中では、『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル著、勝間和代訳、講談社) という本も紹介しています。

『天才!成功する人々の法則』(Outliers: The Story of Success) は、アメリカで 2008年に出版され、日本では 2009年に出版されていますが、様々なデータや実験、事例を元に、天才が作られる過程が書かれています。

そして、驚くことに、この本の結論は、1966年に出版された鈴木鎮一さんの『愛に生きる – 才能は生まれつきではない』に書かれている内容とほぼ同じです。

つまり、豊富なデータを検証してみても、鈴木鎮一さんの「才能」についての考えや認識は、かなり正しいと言えるのではないでしょうか。

しかし、鈴木鎮一さんは、明治生まれ(1898年)の方で、戦前、戦中、そして戦後を生きた方です。1998年1月に99歳で他界されました。

スズキ・メソードのベースとなる「母語教育法」は、この本が出版されるよりもかなり前の昭和6年(1931年)くらいから作られ、そして実践されてきました。

第2次世界大戦よりも前に、日本では天才をつくる「才能教育」が実践されてきたことは、多くの方にとって驚きではないでしょうか。

しかし、この「才能教育」は、何か特殊なものではありません。「母語教育法」の「母語」とは「母国語」のことです。

学校の成績が悪く、生まれつき頭がよくないと言われる子供でも、日本語を話すことはできているという事実をヒントにしています。

複雑な言語を自由に話せるようになるまでには、かなりの教育が必要となりますが、誰でもそれを習得する能力は持っているということです。

「算数ができないのは頭が悪いからではない。教育の方法がまちがっているのだ。才能がないのではなくて、育てられなかったのだ。」と書かれています。

教育者や親御さんにとっては、ドキッとする内容かもしれません。

お子様の才能とスズキ・メソードについて考える その2 に続きます)

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