師走のピアノ教室


2022年12月26日


(この記事は、2022年12月12日に配信しました第361号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、師走のピアノ教室の様子です。

12月も、もう半ばになりました。もう次回が、今年最後のレッスンという月2回の生徒さんもいらっしゃいます。だいぶ本格的な寒さが訪れてはいますが、それでもまだ日中の日差しの温かさを感じる今日この頃です。

朝一番早い時間にいらっしゃっている生徒さんは、レッスン室に入るなり「今日、86歳になりました」とお話されました。体験レッスンの時から割と寡黙なタイプで、入会後もしばらくは、あまりお話をされませんでしたが、だんだんと慣れていただいたようで、少しずついろいろなお話をされるようになり、遂に、ご自分の誕生日のご報告までしていただけるようになりました。嬉しい限りです。

すかさず、「おめでとうございます!」と拍手をしながらお祝いの言葉を掛けましたが、直ぐに「なので記念に、今日は練習している曲が終えられるように頑張ります」と意気込みまで話していただきました。

いつも熱心に練習されていますが、この日は最初からとても良い調子で、割と早い段階で曲が仕上がり、終わりという事になりました。予想以上に早かったようで、「先生に、だいぶおまけをしてもらって…」とおっしゃっていましたが、「いやいや、フレーズの取り方や指使い、テンポなど各所のポイントがしっかりと出来ていたので、終わりになったんです」と説明をしますと、ちょっと、ほっとされている表情を見せていました。

そして、「先日、久しぶりに従兄に会ったんです。従兄は、調律師なんですが…、まあ、90歳近くで歳なので今はやっていないみたいですが。その従兄が、ピアノを弾いているなら、これを弾いてみろと楽譜をくれたんです」とお話されました。楽譜を見せていただきますと、なんとその従兄の方が作曲した曲で、しかも4曲もあり、びっくりしました。バラエティにも富んでいて、ピアノソロだけでなく、歌とピアノ伴奏の楽譜だったり、ピアノソロの曲も、メロディーと伴奏というスタイルもあれば、宗教音楽っぽいコラールのようなスタイルの曲もありました。

どういう曲なのか、全くわからないとの事なので、4曲全てを私が弾いて、それぞれの曲の特徴やら難易度なども解説しました。「いや~、どれも難しそうで、私にはさっぱりで無理ですね」などとおっしゃっていましたが、「でも、楽譜をもらって放り出しておくわけにもいかないので、頑張ります」という事で、最初に弾く曲を決めて、指番号を書き、来週から練習を始めることになりました。

レッスンが終わり、お帰りになる際に、次の時間の生徒さんにも、お誕生日のお祝いの言葉を掛けられて、半分照れながら、でも嬉しそうな笑顔を見せていました。これから練習を進めて、作曲者の従兄の前でピアノ演奏を披露できる日が早く迎えられるように、私もしっかりとレッスンをしていきたいと思いました。

今月、ヤマハのコンサートグレードを受験することになった小学生の生徒さん方は、選曲後、頑張って練習を進めています。一番早く本番を迎える生徒さんは、お姉さんの強力なサポートもあって、あっという間に弾けるようになっていました。小柄な体格なので、音域の高い箇所が弾きにくい様ではありますが、レッスンでは弾きたい音の鍵盤を見て、よく狙ってから音を出すことや、体重を少し高音部側にかけて、少しでも弾きやすい体勢を取ること説明して、レッスンでも練習をしてみました。

本番前の最後のレッスンでは、全然緊張していないと話していて、いつもながらの度胸のある頼もしい様子を見せていました。暗譜の心配もないですし、音域の高いところも正確に弾けるようになってきていますから、自信が持てているのではないかと思います。フレーズの切れ目が少し繋がってしまうところや、クレッシェンドの加減がもう少し適切な分量で弾けるように少し修正して、この日のレッスンを終えました。初めてのグレード受験ですが、普段の力を十分に発揮できるように、祈っているところです。

別の生徒さん姉妹も、グレード受験は初めてになります。今回は、初受験の方に景品の特典があり、その景品が魅力的で受験することになったのですが、生徒さんのお母様が「そのような動機で受験しても、良いのでしょうか」と恐る恐るお話をされていました。「もちろんです。キャンペーンってそういうものですから、ご心配なさらず是非チャレンジしてみましょう」とお話をしました。

この生徒さん方も、普段にも増して張り切って練習したようで、みるみる弾けるようになり、びっくりしました。妹さんは、軽やかで少し面白い感じの曲を課題曲に選んだのですが、曲のタイトルから、この部分は〇〇な感じとイメージを膨らませて弾いたり、左手の伴奏部分の音にも、大切な音を少し強めに弾くと、実は半音階の進行になっている事がよく伝わるし、伴奏のリズムも、より軽やかな感じが伝わる事を見本として弾きながら説明して、レッスンで練習をしてみました。はじめの頃は、意識し過ぎてかなり重たい演奏になっていましたが、だんだんと要領が掴めたようで、だいぶ安定してきました。

自由曲は、同じようなフレーズが何回も出てくる曲なので、暗譜で少し苦戦していましたが、1回目は〇、2回目は△など、頭を使って音楽の進行を掴むことをお話して、迷いがだいぶ減ってきたようです。あと少しでバッチリ暗譜ができそうなので、本番には十分間に合いそうです。

レッスンで、「合格しないと、プレゼント(キャンペーンの景品)はもらえないの?」と心配そうに聞いていましたので、「参加したらもらえるから、大丈夫よ。それに、グレードは不合格にさせようと思って審査しているわけではないから、心配しないで頑張ろうね」とお話しました。直ぐに「あ~、よかったっ!」とニコニコしながら答えていたのが印象的でした。

どちらかというと大人しいタイプのお姉さんは、課題曲では、かなり意外な曲を選びました。前奏部分からして、だいぶ激しい感じの曲なのです。テンション高く、情熱的に弾き始めると良い曲なのですが、少し大人しく弾き始めてしまうので、弾き始める前に頭の中で元気よく拍子を数えてから弾くと、最初の音から激しい感じで弾けることを説明して練習をしました。割と直ぐに掴んで出来るようになり、生徒さん自身もビックリしていましたので、これがしっかりと定着できれば安心という事で、レッスン後にお母様にもその旨をお話しました。

また、課題曲、自由曲の両方に共通して、楽譜の記述通りにペダルを使用していたのですが、そうすると響きが重たくなってしまい、本来の曲の軽やかさが損なわれてしまう箇所については、ペダルを無しにした事、しかし、本番の会場はあまり響かないので、和音の響きをより豊かにしたい箇所については、楽譜の指示通りに使用する事を、生徒さんと一緒に弾き比べをしながら決定した事も、合わせてお話しました。

生徒さんも、響きが重たくなってしまう事を、どうも気にしていたようなので、改善されてホッとされている様子でした。生徒さんのキャラクターとは真逆なタイプの曲を弾く事になりますが、こういうタイプの曲も弾けるという新たな一面が発見出来たり、自信にも繋がったら嬉しいなあと思っています。

残すところ、今年も1ヵ月を切りましたが、これから本番を迎える生徒さん方や、今年中に練習している曲を仕上げたい生徒さん方など、それぞれ目標を持って日々練習に励んでらっしゃいます。その目標が見事に達成できますように、私も精一杯励みたいと思います。

スポンサード リンク



(この記事は、2022年11月28日に配信しました第360号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、クラシック音楽とコロナ禍についてです。

晩秋になり、都内の街路樹もだいぶ色づき始めていますが、今年は思ったよりも暖かい日もあり、例年よりも過ごしやすい気もしています。コロナが流行り始めてから3年が経ち、休校や休業、不要不急の外出の自粛から始まり、それが段々と緩和され、今ではコロナとの共生という流れになっています。ピアノ教室では、最初の1年は発表会やコンサートを中止にしましたが、その後は規模を縮小して少しずつ再開して今日に至っています。

コロナ禍で、クラシック音楽のコンサートなどを企画・運営している事業者は、どのように対応してきたのか、どのような苦労があったのかを伝えるインタビュー記事を見つけたので読んでみました。

クラシックのコンサートやリサイタルでは、ある程度の大きさのホールで多くの聴衆が集まり、演奏が終わるとブラボーなどと声を上げて拍手喝采で終わるという流れですから、コロナ禍の影響はかなり大きくなります。コロナ流行の最初の頃は、コンサートやリサイタルが中止となりましたが、その後、無観客で再開し、次に収容人数の50%を上限として観客を入れてよい事になり、少しずつ楽になったのかと思っていましたが、なかなか大変だったようです。お芝居は何回も公演がありますし、ポピュラー音楽のコンサートは大きな会場で行うので、普段の半分の観客でもなんとかなるのかもしれませんが、クラシック音楽のコンサートでは採算が取れないそうです。オーケストラ公演では、演奏者も多いですからなおさらです。

3回目の緊急事態宣言前には、日本クラシック音楽事業協会としては、これまでのコロナ対策をした上でコンサートなどの継続を要望したそうですが、「コンサートでクラスターが出ていないのは分かっているけれど、人の流れを止めないといけない」という事で、全面中止になったのだそうです。その後、緊急事態宣言の再延長の時に、コンサートなどは観客数の制限付きで行っても良いという緩和措置が取られました。しかし、これまでは全面中止で補償が付いていましたが、緩和措置で補償がなくなり、コンサートが開催できる嬉しさ半分、採算が取れない悲しさ半分という複雑な状況だったようです。

緊急事態宣言が解除されてからは、ウィーンフィルやベルリンフィルなどの海外のオーケストラの検証実験に基づいて、日本のオーケストラも再開しましたが、独自の基準を設けるため日本クラシック音楽事業協会と日本オーケストラ連盟、日本演奏連盟の3つの団体が一緒になって、NHK交響楽団や感染症の専門家たちと共に飛沫実験などを行ったそうです。普段は、それぞれ別々に活動をしている団体が、コロナ対策を機に集まって活動をしたというのですから、皮肉とも思えますし、ちょっと興味深いとも思えます。ちなみに実験結果は、トランペットやトロンボーンは2メートルほど前方に飛沫が飛ぶそうですが、その他の楽器はこれまで通りでも、ほぼ感染リスクが変わらなかったそうです。

このような検証実験を経て、ガイドラインを作ってコンサートを少しずつ再開し、現在では、かなりコロナ禍前のようにコンサートやリサイタルが開かれるようになりました。再開されて良かったと思っていましたが、その陰にこのような業界団体の苦労があるとは知りませんでした。しかし、その甲斐あって満席のコンサートもあるのですから、苦労が報われた面もあるでしょう。

コンサートが通常のスタイルで再開されますと、観客の中には、コロナ対策として座席の間隔を空けて座っていた頃の方がよかったという声を上げる方も少なくないそうです。1席ずつ開けて座ることで、隣の方を気にすることなくゆったりと音楽を楽しめるのですから、お客の立場に立つと断然その方がよいわけです。しかし、運営側からすると採算が取れませんから、今後は難しそうですが、ただ、例えばプレミアムコンサートのような企画は、個人的にはありかなとも思います。

クラシック業界も、このようにいろいろとコロナの影響を受けた訳ですが、コロナ禍だからこそ、先程挙げたようにこれまで別々に活動していたクラシック音楽の団体が結束したり、観客もそんな演奏家を応援しようという雰囲気があり、みんなで一体感を感じて行動できたことは大きな収穫だったそうです。

その一方で、通常に近い形でコンサートが開催されるようになると、ライブビューイングをお金を払って見て、演奏家を応援しようという聴衆が減っているそうで、熱気が冷めてきているとも言われます。演奏会が中止になっていた頃は、オンラインで地方のオーケストラの演奏を聴くなど話題になりましたが、今では聞かなくなった気がします。やはり、生で音楽を聴くことがコンサートやリサイタルの醍醐味ですから、その点でリアルなコンサートにはかなわないわけですが、演奏家の指運びや表情などのアップは、生のコンサートでは見ることができないのでオンラインの強みと言えます。オンラインならではのコンサートやリサイタルの更なる発展も期待したいものです。

また、コロナ禍により、チケットについても変化があります。以前は、ホールの入り口で、スタッフがチケットを確認してチケットのもぎりをしていましたが、接触を避けるために、自分でチケットのもぎりをして箱に入れるスタイルになりました。スタッフの人数を減らすこともできますから、これも一つの変化ですね。いっその事、紙のチケットを止めてスマホを活用する方法も検討されたそうですが、クラシックの聴衆は高齢者が多いので、スマホは難しいとの事で、チケットレスにはなっていないようです。

ライブビューイングやチケットレスは、コロナ禍だからこそ生まれたもので、クラシック音楽業界で失速しているのは残念だと書かれていました。航空券や展覧会、様々なイベントの入場券が、チケットレスになっていますし、ご高齢の方々がスマホを使いこなしている様子も見かけますから、かなり近い将来は、チケットレスになるのではないかと個人的には思いました。

きちんとコロナ対策を講じた上で、コロナと共生しながら音楽業界がより良い進化ができますよう、一人のクラシックファンとして応援していきたいと思います。

スポンサード リンク



(この記事は、2022年11月14日に配信しました第359号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、大人の生徒さん方の発表会のお話です。

ピアノ教室では、夏はお子様の発表会、秋は大人の生徒さんの発表会と、季節ごとに大きなイベントがあります。

お子様の発表会は、基本的に全員参加ですが、大人の生徒さんの発表会は、自由参加となります。お子様は、生徒さんだけでなくご家族も含めて、1年に1回発表会がある事が当たり前という意識をお持ちの方が大半だと思います。そのため、これまで発表会参加を見送りたいというご相談は、ほとんど受けたことがありません。

一方で、大人の生徒さんの発表会は、参加される方は毎回コンスタントに参加されますし、参加されない方は毎回参加されません。これは、ピアノの経験の長さや、どのくらい弾けるのかというレベルにも関係がありません。定年を機にピアノを始められた方が、ほぼ毎年参加されることもあれば、お子様の時にピアノを習っていて、ショパンの練習曲をどんどん弾いているような方が、「子供の時に発表会に出ていたので、もういいです」と丁寧にお断りされたりもします。

先日行われた大人の発表会は、まだコロナが完全に収束していないこともあり、引き続き制限をかけての開催となりました。コロナが広まり始めた3年前は開催中止でしたが、翌年から、少しずつ開催する楽器を広げていき、今ではソロで演奏する場合は、ほぼ全ての楽器で発表会が開催されるようになりました。それでも、制限をかけての開催ですので、1回のステージの参加者は半分以下の10人まで、座席も間隔を空けて少なめの配置です。集合時間は設けず、講師演奏や集合写真も無し、全員の演奏が終わったら解散という進行で行われました。

このような発表会のスタイルになって2年が経ち、生徒さん方もすっかり慣れて、ご理解もいただき大変ありがたく思うと同時に、1年に1回の大舞台なのになんだか味気ない感じで申し訳なく思っています。

さて、発表会の本番当日ですが、前のステージが終了予定時間になっても終わらず、少しハラハラしましたが、終了と同時にバタバタと入れ替えとなり、結局10分遅れでスタートしました。今回は、割とご年配の生徒さんが多かったような気がします。

お子様の発表会よりも、アットホームな雰囲気で行われるのが大人の発表会の特徴ですが、そのような雰囲気でも、やはり普段のレッスンとは異なりますから、多かれ少なかれ緊張はするものです。おそらく今朝までは調子よく弾けていたのかなという方が、本番ではミスしてしまい、何回か弾き直そうとしてもどうしてもうまく続きを弾く事ができず、「もう~」と、つい独り言をつぶやいてしまう場面もありました。見ていてヒヤヒヤしましたが、その後ふとしたタイミングで、いつもの調子を取り戻したようで無事に演奏を終えることができ、本当にほっとしました。

ほぼ毎年参加されている生徒さんは、夏あたりからお仕事がかなり忙しくなったようで、レッスンをお休みされることもあり、本当に発表会に参加するのか心配していました。しかし、改めて意思確認すると、「発表会には出ます!」と力強いお返事を頂きましたので、「お忙しいようですが、2022年は発表会に出て頑張ったという証を残せるように、頑張りましょう」とお返事をしました。

それまでは、曲の前半部分と、中間部の半分ほどを細かく丁寧に反復練習なども含めてレッスンをしていたのですが、この決意をお聞きした1週間後のレッスンでは、なんと発表会で弾く曲全部を、両手でかなりスラスラと弾いていて、本当にびっくりしました。

「いや~、最後まで全部両手で弾けましたね。1週間でこんなに弾けるとは、本当に驚きました。凄いですね~」とお話しますと、「いやいや…」と照れたような表情で、でも嬉しそうなお顔をされていました。その後、いくつもの声部(パート)が入り組んだ作品なので、どのフレーズが重要なのか、そこが浮き立って聴こえるようにするにはどうしたらよいのかなど、弾きながら説明をして、一緒に練習をしました。

同じ曲でも、フレーズを見て弾き方を変えると、ガラッと曲の印象が変わります。生徒さんも、解説を聴きながら深く頷いていましたし、実際にご自分で弾いてみて「ああ~、全然違うっ」と驚いたような声で話していて、「ですよね~。すっごく変わりますよね」と返事をしました。作品の奥深さを、ご一緒に感じることができて、私もとても楽しいひと時でした。

本番では、緊張はされていたようですが、最初の音から気持ちを込めて弾いていることが伝わってきましたし、レッスンで「ああ~、全然違うっ」とおっしゃっていた部分も、味わい深く弾いていて、凄いなあと感じました。

生徒さん自身は、ミスしたところを少し悔やんでいるようにも見えましたが、お忙しい中、当初の予定通りに発表会に向けて準備をして、やり切った達成感も感じていただければと思いました。

忙しい事を口実に、回避することもできたわけですが、それをせずに最初に決めた事を最後まで貫く姿勢に、心から拍手を送りたいですし、とても励まされた出来事でした。

スポンサード リンク


« 前のページ次のページ »

最近の投稿

カテゴリー

ブログ内検索

メールマガジン

音楽ナビ

con Vivace について

アーカイブ

ブログ・ランキング

にほんブログ村 音楽ブログ 音楽教室・音楽学習へ