これまで、ピアノの黒鍵や、シャープ(#)、フラット(♭)の弾き方については、多くの記事を書いてきましたが、ご質問が絶えないようですので、
これまでの記事を再度まとめて掲載いたします。
ご不明の内容に一番近い質問を、以下から選んでください。
・ 楽譜にシャープ(♯)やフラット(♭)が書かれていますが、見方がわかりません
・ シャープ(♯)やフラット(♭)を付けて弾くのか、付けないのかわかりません
・ ファの♯やシの♯など、特定の音でどの鍵盤を弾いたらいいのかわかりません
・ 特定の鍵盤(黒鍵など)が、何の音(ドレミ)かわかりません
・ 曲が何調(ト長調やハ短調など)かわかりません
調号と臨時記号
質問: 楽譜にシャープ(♯)やフラット(♭)が書かれていますが、見方がわかりません
質問: シャープ(♯)やフラット(♭)を付けて弾くのか、付けないのかわかりません
楽譜のシャープやフラットの見方、そして、どの音にシャープやフラットを付けて弾くのかわかるためには、以下の知識が必要になります。少し長いですが、お読みください。
シャープやフラットは、音符のすぐ左隣に書かれている場合と、楽譜の各段の始めにあるト音記号やヘ音記号のすぐ隣に書かれる場合があります。
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臨時記号
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調号
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音符のすぐ左隣に書かれているシャープやフラットを総称して、
臨時記号と言い、各段の始めに書かれるシャープやフラットを、
調号と言います。
まず、
調号の見方について説明します。
ハ長調やイ短調の曲では、調号が付きませんが、それ以外の調の曲では、調号が付きます。今回は、ニ長調を例に説明しますが、他の調でも調号の見方は同じです。
ニ長調の曲では、ト音記号の横の「ファ」と「ド」の音にシャープが書かれています。この場合は、この曲に出てくる「ファ」と「ド」の音は、それぞれ「ファのシャープ」、「ドのシャープ」を弾くことになります。
調号で重要な点は、
オクターブ違う音にも、シャープやフラットが適用されることです。つまり、ニ長調では、高さの違う全ての「ファ」と「ド」の音をシャープを付けて弾くことになります。
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ニ長調の曲
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なお、ニ長調以外の曲でも、ト音記号やヘ音記号の横に書かれているシャープやフラットの場所を見ることで、どの音にシャープやフラットを付けて弾くのかわかりますが、
調号のシャープやフラットは付き方が決まっていて、必ず以下の順番で出てきます。
・ シャープは、ファ・ド・ソ・レ・ラ
・ フラットは、シ・ミ・ラ・レ・ソ・ド
例えば、調号でシャープ2個の場合は、「ファ」と「ド」にシャープが付きます。シャープ4個の場合は、「ファ」と「ド」と「ソ」と「レ」にシャープが付きます。
フラットも同様で、フラット2個の場合は、「シ」と「ミ」にフラットが付きます。フラット4個の場合は、「シ」と「ミ」と「ラ」と「レ」にフラットが付きます。
このように、調号のシャープやフラットの数を見るだけでも、どの音にシャープやフラットを付けるのか判断ができます。
なお、シャープは 5個まで、フラットは 6個まで調号として出てきます。
次に、
臨時記号の見方について説明いたします。
ここでは、わかりやすくするために、調号の付かないハ長調を例に説明しますが、考え方は他の調でも同じです。
音符のすぐ左隣にシャープが書かれている場合、そのシャープは臨時記号となります。基本的に、臨時記号は、その記号の付いている音にだけ有効です。
例えば、臨時記号で「ド」の音にシャープが付いている場合、シャープが付いていない他の音ではシャープを付けません。
そのため、シャープが書かれていない高い「ド」は、シャープを付けずに弾きます。
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臨時記号のシャープ
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しかし、臨時記号には、1つ例外があります。
臨時記号の付いていない音も、臨時記号をつけて弾くことがあるのです。次の3つの条件がそろった音だけが、これに該当します。
・ 同じ小節の中にある
・ 同じ名前(ド、レ、ミ)の音である
・ 同じ高さの音である
つまり、臨時記号で「ド」にシャープが付いている場合、その同じ小節にある、同じ高さの「ド」では、シャープが横に書かれていなくても、シャープを付けて弾く必要があります。
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同じ小節内の同じ音
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これは、とても間違いやすく、また見落とすことがとても多いので気をつけましょう。小節が変わると、その臨時記号の効力はなくなりますので、上の楽譜でも次の小節に書かれている「ド」は、
シャープを付けずに弾きます。
今度は、またニ長調を使って、臨時記号の「
ナチュラル(
)」の説明をします。ナチュラルは、以下のような記号です。
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ナチュラルの記号
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ナチュラルの臨時記号が付いている音は、調号のシャープやフラットを付けずに弾きます。例えば、上の楽譜では、ニ長調で「ド」の音ですが、ナチュラルが付いているのでシャープを付けずに弾きます。
ナチュラルでも臨時記号としての条件は同じですので、下のような楽譜の場合、同じ小節内の同じ高さの「ド」は、シャープを付けずに弾きます。
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同じ小節内のナチュラル
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以上が、基本ルールなのですが、たまに、ニ長調などの曲でも、わかりやすくするために「ファ」や「ド」の音に臨時記号のシャープが書かれていることがあります。
この臨時記号は、本来なくてもよいのですが、間違えを防ぐために書かれているものです。特に、ナチュラルの臨時記号が出てきた次の小節では、間違いやすいので、
臨時記号でシャープが書かれている楽譜をよく目にします。もちろん、シャープを付けて弾くことになります。
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ナチュラルと臨時記号のシャープ
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では、上記の内容を理解した上で、もともとのご質問について見ていきましょう。
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シャープが2つ付いている曲なのですが、途中で低いほうのドにシャープがついています、ピアノでどこを弾くのですか?
調号で、シャープが2つ付いていますので、「ファ」と「ド」の音はシャープを付けて弾くことになります。
わかりやすくするために、臨時記号で低い「ド」にシャープが書かれているようですが、本来は不要です。もちろん、この「ド」はシャープを付けて弾きます。
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ト音記号の隣、シに♭が付いていて、曲の途中に臨時記号でシにナチュラル()が付いているときは、普通のシを弾けばいいのですか?
ナチュラルの臨時記号が付いていますので、その「シ」にはフラットを付けないで、普通の「シ」を弾きます。
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もともと、楽譜にファの♯が付いているときに、ミの♯は、どこの鍵盤を弾けばいいのですか?
調号で、「ファ」にシャープが付いているときに、臨時記号で「ミ」にシャープが書かれていることになります。この場合は、ミのシャープを弾きます。
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楽譜の中にト音記号、ヘ音記号の横にフラットがついているのですが、どうゆうふうに弾くのですか?
調号で、フラットが1つ付いているようですので、「シ」の音はフラットを付けて弾きます。
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1オクターブ音が違っていても、1小節間ならシャープは有効ですか?
調号としてシャープが付いている場合には、オクターブ異なる音にもシャープが適用されますので、シャープは有効です。
臨時記号としてシャープが付いている場合には、オクターブ異なる音は「同じ高さの音」になりませんので、同じ小節であっても、その音にシャープは有効となりません。
鍵盤の場所がわからない
質問: ファの♯やシの♯など、特定の音でどの鍵盤を弾いたらいいのか場所がわかりません
質問: 特定の鍵盤(黒鍵など)が、何の音(ドレミ)かわかりません
以下に、各音(ドレミ)のシャープやフラットの鍵盤の場所を図示しています。(ダブルフラットやダブルシャープを含めた図は、
シャープ、フラット、ダブルシャープ、ダブルフラットの鍵盤の場所をご覧ください)
図を見ていただくとわかりますように、1つの鍵盤に複数の読み方が存在することになります。例えば、「レのシャープ」と「ミのフラット」は同じ黒鍵です。
歌やヴァイオリンなど、演奏する人自身が音の高さを決めていく(高さを調整できる)楽器では、例えば「レのシャープ」と「ミのフラット」では微妙に区別して異なる音を出します。
ピアノも、進化の過程で歌やヴァイオリンと同じように、1つの音に1つの鍵盤というように、厳密に作られた事もありましたが、あまりに複雑すぎて広まることがありませんでした。
現在のピアノは、弾きやすいように、簡略化されているため、異なる音でも同じ鍵盤を弾く組み合わせがでてきます。
しかし、勝手に音を読み替えないようにしましょう。例えば、「シのシャープの音」を「ドの音」と認識してしまいますと、弾いていくうちに「この曲はドに調号でシャープが付いているから、
ドにはシャープを付けないと」などと余計なことを考えてしまい、違う音になってしまうからです。
あくまでも、「シのシャープ」のように、元の音で認識しながら弾くようにしましょう。
調号と調性の関係
質問: 曲が何調(ト長調やハ短調など)かわかりません
その曲が、何長調なのか何短調なのかは、ピアノを弾く上で必須ではありませんが、音楽の知識としては持っておきたいですね。
1つの調号につき、2つの調(長調と短調それぞれ1個ずつ)があり、そのどちらかの調の曲ということは簡単にわかります。
シャープの調号の場合は、以下のようになります。
調号1個 ト長調、または ホ短調
調号2個 ニ長調、または ロ短調
調号3個 イ長調、または 嬰ヘ短調(えいヘ短調)
調号4個 ホ長調、または 嬰ハ短調
調号5個 ロ長調、または 嬰ト短調
フラットの方は、以下の通りです。
調号1個 ヘ長調、または ニ短調
調号2個 変ロ長調、または ト短調
調号3個 変ホ長調、または ハ短調
調号4個 変イ長調、または ヘ短調
調号5個 変ニ長調、または 変ロ短調
調号6個 変ト長調、または 変ホ短調
調号がない(
調号0個)場合は、ハ長調、または イ短調 です。
そして、明るい曲でしたら長調、暗い曲でしたら短調と言うことになります。
では、「何をもって明るい曲と言うのか?」と更に追求されたい場合には、楽典の本を読みましょう。
楽典 - 理論と実習 (音楽之友社)
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