ピアノの初級から中級へと進む過程で、ペダルの操作は必ず出てきます。
ピアノのペダルは3本ありますが、一般的に「ペダルの操作」という時は、右のペダルのことを指します(ダンパーペダルと言います)。このペダルは、グランドピアノでも、アップライトピアノでも共通です。
左のペダルと真ん中のペダルは、グランドピアノとアップライトピアノでは効果が異なりますが、かなり高度な曲でない限り、これらのペダルは使用しませんので、まずは、右のペダルの使い方を覚えることが重要となります。
ピアノの右のペダルは、踏んでいる間に弾いた音すべてが響く効果があります。ペダルを使うことで、指ではつなげられない音をペダルでつなげたり、個々の音や和音を響かせて、音楽をより美しく華やかにすることが出来ます。また、通常よく聴くピアノの音は、このペダルを使った音になるのです。
このペダルの操作を軽く考えている方が多いのですが、独学でピアノの練習をされる場合、このペダルの操作が最難関となる可能性があります。
個人差がかなりありますので、すんなり出来てしまう方もいますが、比較的多くの方は、ペダルの正しい使い方をなかなか習得できず、また自分のペダルの使い方が間違っていることに気が付かずに、音を濁らせてしまいます。ペダルを軽く考えず、また自己流で適当にペダルを踏まず、正しいタイミングでペダルを踏み、正しいタイミングでペダルを戻せるように、基礎的な練習を行うことが非常に重要です。
ペダルを使う時の体勢
まずは、ペダルを使う時の体勢からです。
右足の親指と人差し指の付け根から少し足の内側部分が、ペダルの手前3分の1あたりに乗るようにします。ペダルの手前部分は、少し面積が広くなっていますが、この面積が広くなったところに足を乗せることになります。言葉では、わかりにくいと思いますが、絵で書くと以下のようになります。
よく、足のもっと内側で踏んだり、逆に、足のつま先で踏む人がいますが、そのような踏み方をしますと、ペダルを踏んでいないつもりでも、少しペダルが押されていて音が濁ったり、またペダルを踏んだときに深く踏むことができず、きれいに音が伸びないなどの問題が発生します。ペダルに足を乗せたときに、以下の写真のように、ペダルの根元がある程度見えるくらいが適切です。(足のサイズによっても変わりますので、ある程度の参考としてください)。
以下のように、ペダルが完全に隠れてしまう場合、足のもっと内側で踏んでいる可能性があります。
また、女性に多いのですが、以下のようにつま先で踏んでいないかも、確認しましょう。
そして、踵(かかと)は、床につけておきます。ペダルを踏んだときも、踵が床から離れないように注意しましょう。踵は、常に床につけておきます。横から写真を撮ると、以下のようになります。
これも女性に多いのですが、ペダルを踏んだときに、以下の写真のように踵が床から離れてしまう方がいます。このような踏み方にならないように注意しましょう。
また、反対側の左足は、通常どおりに、足の裏全体を床につけておきます。この左足と、右足の踵で、体を支える形になります。
ペダルを踏んでみる
ペダルを踏むときの体勢がわかりましたら、この体勢を保ったまま、ペダルを踏んだりペダルを上げる(ペダルを離す)動作を、何回か反復練習します。この時に、以下の点に、気をつけるようにしてください。
1. ペダルを踏むときは、
「ぐっ」と一瞬で、これ以上踏み込めない
ペダルの底まで踏みます。また上げるときも、
「さっ」と一瞬で、ペダルを元の状態まで戻します。
ゆっくりと時間をかけて踏んだり上げたりしないように、
短時間で操作をします。時間をかけて踏んだり上げたりしますと、ペダルで響かせたい音に間に合わずに通り過ぎてしまったり、きれいに音が響かなかったり、音が切れないことがあります。
2. ペダルを踏むときに、
体が前傾姿勢にならないように気をつけましょう。
体の弾みを使って踏まないようにします。特に小柄な女性の方に、このような傾向が見られますので気をつけてください。他の人が、あなたの上半身を見て、ペダルを踏んでいるのか上げているのか、わからなければ、この動作が上手に出来ていると言えます。
3. ペダルを踏んだときに、
弾みで踵(かかと)が上がらないようにしましょう。
先程のペダルを弾く体勢のところでも説明しましたが、素早くペダルの底まで踏もうとして、弾みで踵が上がる方が女性に多く見られます。再度、注意をするようにしてください。
4. ペダルを上げる(元の状態に戻す)ときには、
完全に戻します。
99%戻しても失敗だと思ってください。
少しでもペダルが残ると(ペダルで響かせた音が残るという意味です)、音が濁って汚い響きになってしまいます。これを、「
ペダルが濁る」といいます。
ペダルの悩みの多くが、ペダルが濁るというものですが、この「ペダルが完全に戻せていない」ことが、原因の一つに挙げられます。これは
非常に厄介で、一度癖が付いてしまいますと、直す事がとても難しくなってしまいます。この予備練習のときには、是非ご自分に厳しく、100%ペダルが戻るように気をつけてください。
「ペダルが濁る」について
ここで、「ペダルが濁る」現象について、簡単に説明をいたします。ピアノのペダルが初めての方は、ペダルで
音が濁るとは、どのような状態なのかわからないかもしれません。
ここでは、例として、2つの和音をペダルを使って響かせて弾いてみます。1つの和音を響かせて弾き、次にまた別の和音を響かせて弾きます。2つの和音の音は混じり合わないように(混じり合うと音が濁ります)して、かつ、2つの和音の間が空いてもいけない場合です。ピアノは、指を鍵盤から離さなければ、その弾いた音は響き続けます。しかし、次の和音を弾く際には、一旦手を放して、別の鍵盤を弾く必要があるわけですが、その際にペダルを使わないと、手を放した瞬間に、前の音が消えて、次の音との間が空いてしまうことになります。
まずは、正しく弾いた際の音を聴いてみてください。
ペダル:成功例
(WMA形式です。Windows Media Player で再生できます)
次に、前の音が正しく切れず、音が濁ってしまった場合です。
ペダル:音が濁っている
次は、前の音を早く切り過ぎて、音がつながっていない場合です。
ペダル:音が濁っている
なんとなく、ペダルを正しく操作することの重要性がわかってきましたでしょうか?
音を出しながら
それでは次に、音を弾きながら、ペダルを踏んだり上げたりする練習をしましょう。
ここでは、「ド」と「#ド」の音を使って練習をしていきます。以下のような楽譜になります。
基本的に、ペダルの練習ですので、使用する音は何でもよいのですが、ただ「ド」と「ミ」や、「ド」と「ソ」のように、和音を構成できる音は、音が混ざっても濁って聞こえませんので、音が混ざったときに違和感を感じるような音の組合せで練習をした方がよいと思います。また、ペダルを使わないと音が切れるように、その都度、鍵盤から手を離して弾くようにします。無意識のうちに、鍵盤から手を放さないで、別の指で次の音を弾いてしまう方は、手が届かないような少し離れた音を使って練習した方がよいかもしれません。
まず最初に、この楽譜を正しく弾いた際の動画を見てください。
ペダルの練習:成功例
(WMV形式です。Windows Media Player で再生できます)
楽譜の見方ですが、通常ペダルの記号は、音符の真下に書かれます。しかし、「ド」の音と一緒には踏みません。少し遅れて踏みます。また、ペダルを切る「*」型の記号が書かれていませんが、その場合は、補って見る必要があります。そのため、もし演奏順序に正しく楽譜を書いたとすると、以下のようになります。(この楽譜は、説明用に作ったものです。通常、このような楽譜の書き方はいたしません)
そして、このペダルの練習方法ですが、以下のようになります。
「ド」を弾く
「ド」を弾いたまま、ペダルを踏む
ペダルを踏んだまま、鍵盤から指を離す(音は鳴ったままになる)
ペダルを踏んだまま、次の音「#ド」の鍵盤に指をのせる(まだ弾かない)
「#ド」を弾くと同時に、ペダルを上げる(鍵盤を下げる速さと、ペダルを上げるスピードを同じにする)
ペダルを踏む
これで、「ド」と「#ド」の音が切れずに、また濁らずに伸ばすことができます。
ここでのポイントは、
1つ1つの動作を、ゆっくりと丁寧に、また確実に行うという事です。特に、
5.の動作は意外と難しいので気をつけてください。
実際にレッスンの時には「それでは、いきますよ。せーの」という掛け声とともに、この動作をしていただいていますが、それでも、これを1回のレッスンで出来た方は、ごくごく僅かです。殆どの方は、気持ちが焦ってしまい、先にペダルを上げてしまいます。わずかでも先にペダルが上がってしまいますと、音がつながらずに切れてしまいます。また、ペダルが遅れてしまいますと、前の音と重なってしまい、濁って汚い響きになってしまいます。「
弾くのと、ペダルを上げるのは同時に」というタイミングが大切なのです。
ペダルを先に上げてしまい、音が切れてしまった場合の動画を見てください。
ペダルの練習:音が切れてしまった場合
また、ペダルを上げるのが遅れてしまい、音が濁ってしまった場合の動画です。
ペダルの練習:音が濁ってしまった場合
ご自身が、このような失敗をしていないか、再度確認をしてみてください。
慣れてきましたら、この練習を少し速く行いましょう。一連の動作を、何セットか継続して繰り返します(
1 から
6 の動作の後、
3 から
6 を繰り返します)。
このような練習になります。動画をご覧ください。
ペダルの練習:繰り返し練習
この時、タイミングがずれたり、動きが雑にならないように気をつけてください。そして、
ゆっくりと丁寧に行う練習と、少し速く行う練習を交互にして、確実な動きを掴んで身につけましょう。
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