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「後悔しないピアノ選び」(第1章 ピアノという楽器)

第1章 ピアノという楽器

よく、お店でピアノを購入するときに、「ピアノは一生もの」「ピアノは一生に一度のお買い物」と言われますが、本当に一生使えるものなのでしょうか。確かに、一生に一度しかピアノを購入しない人は多いのかもしれません。おそらく、お子さんがピアノを習うために買ってあげるときが、ピアノを購入する機会としては一番多いのではないでしょうか。

しかし、「ピアノ」と呼ばれる楽器は奥が深く、音もメーカーや機種、場合によっては個体によってもまったく違い、購入後の価値にも大きな開きがでてきます。また、グランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノといくつかの種類がありますが、それぞれに特徴があり、大きさや形といった目に見える部分以上の違いと、それらを日頃練習に使用した際に弾く人の弾き方や癖にまで影響を与えます。しかも、ピアノには国産ピアノだけでなく、海外にも多くのピアノメーカーが存在し値段には2桁もの違いがあります。そこまで値段が違う理由は、いったいどこにあるのでしょうか。そもそも、ピアノは、車や家電製品などと同様に年月と共に価値が下がる一般的な工業製品なのでしょうか、それとも芸術品、工芸品なのでしょうか。

この章では、ピアノという楽器の歴史と、ピアノという楽器の種類について説明をし、最後に、最近使う方が増えてきた電子ピアノについて説明をしていきます。

1.1 ピアノの歴史
ピアノという楽器は、1697年頃にイタリアのクリストフォリが制作しました。
ピアノが出来る前に広く使われていた鍵盤楽器は、チェンバロと呼ばれる楽器です。今でも、チェンバロという古典楽器は売られていますが、あまり一般的ではありません。チェンバロとピアノの大きな違いは、音の出る仕組みです。ピアノは、弦をハンマーで叩いていますが、チェンバロは、弦をはじくことで音を出しています。チェンバロは、英語でハープシコードと呼ばれますが、指で弦をはじいて音を出すハープなどと同様に、鍵盤の動きに連動して、ツメで弦をはじいて音を出します。また、ピアノでは、鍵盤を弾く強さによって音の強さを変えることができますが、チェンバロでは、音の強さが変えられません。これも、大きな違いです。


チェンバロ


2段チェンバロ

クリストフォリが作成したピアノは、まだ音域も狭く、ペダルもありませんでした。そして、多くの部品が木によって作られていますので、音もチェンバロに似た音で、それ程大きな音ではありませんでした。


クリストフォリが制作したピアノを復元したもの (浜松市楽器博物館)

ここで、音楽の歴史について、簡単に触れさせていただきますと、西洋音楽は、大きく4つの時代に分けて説明されます。「バロック期」「古典派」「ロマン派」「近・現代」です。バロック期は、17世紀から18世紀前半。古典派は、18世紀中から19世紀初頭。ロマン派は、19世紀。近・現代が、19世紀末以降です。作曲家で言いますと、バッハは、バロック期。モーツァルトやベートーヴェンは、古典派。ショパンは、ロマン派。ドビュッシーは、近・現代となります。
クリストフォリがピアノを作成した頃は、バロック期となりますが、ピアノがすぐに普及したわけではありませんので、バッハの時代には、ピアノよりも教会のパイプオルガンやチェンバロなどが鍵盤楽器として使われており、バッハの残した音楽のほとんどもピアノ曲と言うよりも、オルガンやチェンバロの曲となっています。また、モーツァルトやベートーヴェンが使っていたピアノも、現在のピアノとは少し異なり、フォルテピアノと呼ばれているものになります。鍵盤の数が現在のものよりも少なく、弦もチェンバロに近い、細い弦が使われていました。ペダルも足で踏むものよりも、ひざでレバーを押すタイプのものが一般的でした。この頃の音楽は、サロンなど比較的小規模の会場で演奏されていたこともあり、フォルテピアノの音は、現在のピアノのような大きな音ではなく、柔らかい音色になっています。

その後、音楽の大衆化と共に、演奏するホールや共演するオーケストラの規模が大きくなり、その大きなホールや、オーケストラの音に負けない音として、ピアノには金属が多用されるようになり、より大きな音が出せる楽器へと進化していきます。現在のようなピアノになったのは、19世紀に入ってからのことです。

第1章のみ、公開しております。第2章以降につきましては、「後悔しないピアノ選び」を、ご購入ください。

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