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「後悔しないピアノ選び」(第1章 ピアノという楽器) |
弦の長さ
ピアノは、ハンマーで弦を叩くことにより音を出していますので、弦の張り方や弦の質で音も変わってきます。アップライトピアノのカタログなどを見ていただくと、床から天板までのピアノの高さにいくつかの種類があることがわかると思います。基本的に、アップライトピアノの背が高い方が、内部の弦も長くなりますので、それだけよい音が出る可能性があります。同様にグランドピアノでは、奥行の長さにいくつかの種類があります。フルコンサートピアノのように奥行が長い方が、大きく立派な音が出ますが、フルコンサートピアノほど大きくなりますと、置く場所の問題もありますし、音が大きすぎてホールのような広い場所でないと弾いていて疲れてしまいますので、そこまで大きなグランドピアノで普段練習をされている方はあまりいないと思います。ただ、比較的小型のグランドピアノでも、弦の長さという点では、アップライトピアノに比べて有利で、この弦の長さにより音に奥行が出てきますので、より期待した音を表現しやすくなります。画家に例えると、より多くの絵の具が使えるようになった状態といったところでしょうか。
音の出る部分の違い
最後は、弾いている人が聴く音についてです。アップライトピアノは、響板が裏側についており、響板の振動により出た音が、後ろの壁に反射してピアノを弾いている人のところに届くことになります。グランドピアノでは、響板が下についていますが、上の蓋を開けたり、また蓋を開けなくても譜面台を立てたり外すと、その部分からダイレクトに音が出てきます。自分の音に注力しながら弾く際に、この直接音を聴きながら弾けるということも、グランドピアノが弾きやすく感じられる理由かもしれません。
なお、最近のアップライトピアノでは、トーンエスケープ機構などと呼ばれますが、前面の鍵盤より上にある板(上前板)や、下の板(下前板)の部分に少し隙間を開けて、そこからピアノを弾いている人に直接音を届けるような工夫もされるようになってきました。
誰がグランドピアノを購入するのか
上記のような違いにより、ある程度以上ピアノが弾けるようになりますと、グランドピアノが欲しくなってきます。しかし、「ある程度」とは、いったい「どの程度」なのでしょうか? これは、人によって意見が結構分かれます。ブルグミュラーくらいからグランドピアノにした方がよいという方もいますが、おそらく一番多く言われているのは、「ソナチネアルバムくらいから」ではないでしょうか。
このアップライトピアノとグランドピアノの「弾きやすさ」の違いは、前述しましたように、ピアノを始めて間もない方でも感じられるものですが、ソナチネアルバムになりますと、装飾音符を使用する曲や、16分音符を多用するテンポの速い曲も出てきますし、音の表現という点でも自分なりのより豊かな表現を追い求めたくもなります。そして、このくらいの曲になってきますと結果的にピアノを練習する時間も長くなっていき、ピアノという楽器と向き合う時間も長くなっていきます。このような状態で、普段アップライトピアノで練習をされている方が、グランドピアノで演奏すると、その「弾きやすさ」を強く実感することになります。
なお、幼い頃からピアノを始められて、ソナチネアルバムくらいまで進められるお子様は結構多くいますが、それらの人が、皆グランドピアノを購入するかというと、そのようなことはありません。基本的に、ご自宅のスペースの問題もありますので、アップライトピアノを使い続ける方がほとんどです。実際グランドピアノを購入する人は、音大を目指している方や、音大を卒業されたような方、プロの音楽家の方がほとんどで、趣味でピアノを弾かれている方の多くは、アップライトピアノを使用されていると思います。
ただ、例えばスキーの練習をする際に、パウダースノーのように雪質がよいところで練習をする場合と、雪質が悪いところで練習をする場合では、上達の速度も違うように、グランドピアノに限らず、弾きやすいピアノで練習することが上達を早めることにもつながります。ピアノを購入される際には、音だけでなく、この「弾きやすさ」にもこだわった方がよいかと思います。
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