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「後悔しないピアノ選び」(第1章 ピアノという楽器)
1.4 グランドピアノとアップライトピアノの違い
これまで、グランドピアノとアップライトピアノの違いについて、弦の張り方や、弦をハンマーが叩く構造の違い、そしてペダルの違いについて簡単に説明してきましたが、これらの違いを踏まえて、なぜプロのピアニストや音大を目指す学生がグランドピアノを必要とするのか、その理由について、もう少し掘り下げて説明をしていきます。

おそらく、現在グランドピアノを普段使って演奏している方に、グランドピアノとアップライトピアノの違いについて聞いてみると、弦の張り方や、アップライトピアノではアクション部分の構造により連打ができないという違い以外に、「グランドピアノの方が弾きやすい」と言われる方が多いのではないでしょうか。 この「弾きやすい」という言葉は、非常に漠然としたものですが、「期待した通りの音が出せて、期待した通りに演奏ができる」ということかと思います。
そして、ピアノを弾かない方には信じがたいことかもしれませんが、この「弾きやすさ」の違いは、ピアノの演奏を極めたプロだけが感じるものではなく、ピアノを始めて間もない初心者でも、しばらくピアノの練習をしていると気づくほどの違いがあるのです。比較的大手のピアノ教室では、複数のレッスン室が同時に稼働しており、それぞれのレッスン室に入っているピアノが違うことも多いのですが、このピアノが変わったことによる「弾きやすさ」の違いについては、お子様も含めて、多くの生徒さんが、「弾きやすい」「弾きにくい」を言われます。特に、レッスン室に入っているピアノが、グランドピアノからアップライトピアノ、またはアップライトピアノからグランドピアノに変わったときの違いは、多くの生徒さんが混乱されるほどの違いを訴えます。

このグランドピアノが弾きやすい理由は、以下のところから来ているようです。
・鍵盤の長さ
・鍵盤の応答性
・弦の長さ
・音の出る部分の違い
それぞれについて、説明をしていきます。

鍵盤の長さの違い
グランドピアノとアップライトピアノでは、鍵盤の長さが違います。白や黒に塗られている、実際に弾くところの鍵盤の長さは、グランドピアノでもアップライトピアノでも、ほとんど同じです。しかし、この鍵盤の見えている部分は、鍵盤の棒の一部だけで、ピアの内部の見えていない部分の長さに違いがあるのです。
以下は、グランドピアノとアップライトピアノのアクション部分(鍵盤の動きに合わせてハンマーで弦を叩く部分)の模型です。手前側がグランドピアノ、奥がアップライトピアノの模型です。


グランドピアノとアップライトのアクション部分の模型

この写真を見ていただくと、鍵盤の白く塗られている部分と、塗られていない部分の比率がグランドピアノとアップライトピアノでは異なっていることがわかると思います。グランドピアノは、ピアノの奥行に余裕がありますので、鍵盤も長く、白い部分とピアノの中に隠れている色の塗られていない部分の長さの比が、およそ1対2になっています(フルコンサートピアノなど、グランドピアノの大きさによって、多少この長さが変わります)。アップライトピアノは、奥行に制限がありますので、白い部分と色が塗られていない部分の比は、およそ2対3です。この長さや比率は、ピアノのメーカーが違っても、ほぼ同じです。(カワイのアップライトピアノは、若干鍵盤が短いようです)
このように、長い鍵盤を使うことで、指先の微妙な力の掛け方を変えやすくなり、期待した通りの音の表現がしやすくなっていることがグランドピアノが弾きやすい理由の1つになっています。

鍵盤の応答性
鍵盤の応答性については、グランドピアノやアップライトピアノの説明でも記述しましたが、内部の構造の違いによるものです。グランドピアノが重力を利用して、自然なハンマーの操作を可能にしているのに比べて、バネを利用して強制的にハンマーを戻しているアップライトピアノでは、どうしても構造が複雑になり、指の速く微妙な動きに対して期待した通りの音を鳴らすことが難しくなってしまいます。
ただ、このアップライトピアノのアクションの問題については、各ピアノメーカーも工夫をしており、例えば、ドイツのピアノメーカーであるザウターのアップライトピアノは、もう1つ板ばねを増やすことで、鍵盤を完全に戻さなくても同じ鍵盤を続けて弾けるような構造が追加されています。


ザウターのアクション部分


第1章のみ、公開しております。第2章以降につきましては、「後悔しないピアノ選び」を、ご購入ください。

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